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ロボットの電源
ロボット作りの素,久しぶりの第3回は「ロボットの電源」です。

ロボカップジュニアのロボットは電気でモーターを回して動くものがほとんどですね。(もちろんゼンマイやゴム動力でもいいんですが,制御しにくいし長時間持たないですね)
自律型で動くために,ほとんどのロボットの電源はなんらかの「電池」であるはずです。現状の技術状況から考えて,燃料電池や太陽電池を除外して,充電できない普通の「電池」と充電できる「電池」に分かれます。また,必要な電源として,コンピュータ(マイコン)用の電源と,モーター用の電源(もちろん共用してもいいです)を考えます。

マイコン用の電源としては,(センサやLEDの数などの消費電力にもよるが)せいぜい数100mAくらい出せれば充分ですが,モーターは(動き始める時に)大きな電流(モーターによっては1Aくらいから6A以上のもあります)を消費するので,それだけ供給できる電源が必要になります。もちろん動き始める瞬間だけ大きな電流が流れるだけで,普通はもっと少ない電流で回っていますので,モーターが動き出せれば大丈夫です(あまり大電流を供給できると,モーターがロックしたときに燃えることがある)。試合中の,(ハーフで交換するとしても)少なくとも10分間,2つ~4つ以上のモーターを回せるだけの容量も必要です。結構奥深い世界ですね。
 あと,電池は直列にすると電圧を上げることができますし,電圧が高くなるとモーターも速く回るし,力も強くなります。が,通常モーターには決められた電圧(定格電圧)がありますから,これを超えて電圧をかけると,熱くなったり,モーターが壊れたりします(具体的には熱でブラシが焼けたりベアリングが溶けたりします)。もっとひどい場合にはロボットの回路(モーターを回すための半導体)が焼けてしまったりすることもありますから,無理をしてはいけません。ダイセンのギアモーターは3~6V(定格4.5Vと書いてあります)で使うことになっていますから,それ以上かけると寿命が短くなったり故障したりしますよ。このあたりもよく考えましょう。パワーアップモジュールがアルカリ電池5本なのはなぜか,これもヒントです。

さて,それでは本題の電池の分類から。
 充電できない普通の電池として一般的なのは「アルカリ電池」ですね。大きさ/重さで,ロボットに積むのは,多くの場合,単3電池が多いと思いますが,単2や単4を使う人もいるようです。いずれも1本の電圧は1.5Vとされていますが,大きな違いは,大きさ/重さの他に,大きい電池ほど,一度に大きな電流を取り出せたり,長い時間使えたりする,ということがあります。「マンガン電池」もありますが,こちらは小さい電流を長く取り出す(時計の電池みたいに)用途に向いていて,モーターのように大きな電流を取り出す用途には向いていません。ですので,充電できない電池を使う場合は,普通はアルカリ電池を選びましょう。
 アルカリ電池でも,角形の9V電池(006P)は,数10mAしか取り出せませんから,マイコン用(レギュレータを通してマイコンに合う電圧~5Vか3.3V~に変換して)としては使えますが,モーターを回すのには適しません。ロボットも消費電流の大きい超音波センサなどをたくさん使っていると,電流が足りなくなることも考えられます。きちんとした電圧が出ているか,よく確認しましょう。ついでにReverseのマイコン電源ですが,TJ3の方はそのまま動力用電池を共用しています(瞬間的な電圧低下に備えて1000uFの電解コンデンサを付けています)。Arduino機の方は,携帯充電用のリチウム電池(5V出力)を電源として使っています。(予備に単4電池2本から5V出力するモジュールも用意しています)
 
 動力用電池としてよく使う,充電できる電池には,様々な種類があります。一般の電気店で手に入るものとしては,ニッケル水素電池が多いでしょう。ラジコン屋さんなどでは,単3型のニッカド電池もありますが,最近はあまり使わないようです。どちらも,比較的大きな電流を取り出せるので,モーター用に向いています。1本あたり1.2Vで,単3型で1000mAh~2900mAhくらいの容量(1000~2900mAを1時間流せる容量)のものが市販されています。商品としては,エネループやエボルタなどの「○年後も○%以上使えます」等の表示のあるものを選ぶと,試合直前に充電で慌てなくてもいいのでおすすめです。それ以外のニッケル水素電池は,充電しておいてもしばらくすると自然に使えなくなってしまうものがあるので,試合直前に充電する必要があり,大変です。特にニッケル水素電池は,充電に時間がかかるため,計画的に充電しておかないと,試合中に電池が足りなくなったりしますので注意が必要です。
 ロボットの動き方,モーターの種類にもよりますが,うちの場合1台あたり6本直列で7.2V(定格超えてますが)で動かして,ダイセンモーター4輪オムニロボで,キーパーなら1試合で1000mAhでも充分足りましたし,動き回るフォワードでも,1900mAhの電池で1試合は余裕で持ちました。
 ロボットに電池をのせる時に,電池ボックスにも注意しましょう。ホームセンター等で売っている電池ボックスは,ついている電線が細くて大きな電流を流せなかったり,バネの抵抗が大きくて発熱したり,(特に半透明プラのやつは)熱で溶けてしまったりします。安定して電池から電流を取り出すためには,それなりの太さの電線が必要です(調べてみましょう)。また,できるだけ抵抗になる部分は少ない方がいいです。いろいろ使ってみて,秋月にある金属製の電池ボックスが一番のおすすめです。堅くて電池は入れにくいのですが,とても安定して大きな電流を流せます。ただし,電線と金属製ボックスが触れないように注意しておかないとショートします(前に妹ガンローラー機が白煙を噴いたことがあります)。
 
 さて,ここからは,普通のお店に売っていない電池の話です。リチウムイオン電池,リチウムポリマー電池(リポと略します)など,多くはラジコンカーやラジコンヘリ,電動ガンなどの電池で,それらの専門店でないと扱っていません。これらの電池は,専用の充電器で,正しい充電の仕方で充電しないと,電池を壊すだけじゃなく,最悪の場合,火を噴いたり,爆発したりします(実際イスタンブール世界大会のパドックで火災がありました)。間違ってショートさせても火を噴きます。ですので,個人的にはジュニアのロボットに搭載するのはお勧めしません(やめた方がいいです)。ただ,非常に軽い上に,容量が多く,大電流も取り出せるので,特に重量の厳しいライトウェイトでは魅力的ではあります。が,危険の方が大きいです。よく指導者と相談しましょう。
 一方,同じようなラジコンの電池でも,リチウムフェライト電池(LiFePO4やリフェという)は,リポよりは燃えにくい,より安全な電池と言われています。(ショートさせると発熱して危険なのは同じです)リポ(2セルで7.4V)よりも電圧が低い(2セルで6.6V)ですが,大電流は取り出せます。もちろん専用の充電器で充電が必要ですが,ニッケル水素電池よりも短時間で充電できるため,試合の合間に充電が完了します。
 うちでは,黒豹の方に,リフェ2セル(6.6V)の850mAhのラジコンヘリ用(15C)をメインバッテリーに使っていました。ハーフタイムで交換が必要ですが,2本同時で30分ほどで充電できるので便利でした。重さも50gくらいしかありませんし,大きさも3センチ×5センチくらいで,床下のモーターの間に入っていました(マジックテープで貼付けていた)。お値段1個980円。ただしリフェモードのある専用充電器が4000円~1万円くらいします(絶対必要ですが)。イスタンブールの決勝戦では,リフェ3セル(9.9V)をダイセンモーター(カーボンブラシ改造仕様)にかけていました。1000mAhで1試合戦いましたが,試合終了までバッテリーが持ちませんでした。ハーフタイムで交換が必要なようです。1500mAhのものもありましたが,重量制限を超えるので使えませんでした。※リフェ3セル9.9Vは非常手段です。2試合でモーターの寿命がきます。金属ブラシのままならすぐブラシが焼けます。また,黒豹2はモーターを金属ステーでアルミベース板に取り付け,全体で放熱していましたので持ちましたが,普通のプラスチックホルダーなら,すぐにモーターのベアリング部分が熱で溶けてしまいます。定格を超えた使い方は,電流/放熱/寿命/スペア等々,いろいろ理解した上でそれでもやるのなら止めはしませんが,あくまでお勧めはしません。モーターが速ければ/強ければ,勝てるわけではないことは,すぐにわかると思います。どれだけ速くボールを見つけるか,どれだけ正確にボールを正面にとらえるか,どれだけ正確に相手ゴール方向を向くか...モーターが速くなればなるほど,制御は格段に難しくなります。定格で正確にロボットを制御できるようになってから,スペックアップすることを考えた方がいいでしょう。安易なパワーアップは結局扱いきれずに負ける元になります。
 
[ 2011/12/16 23:59 ]

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